前項では「中級者」向けの山を「技術度」の視点で紹介しました。
ここでは同じ中級者向けの山でも「体力度」が要求される山を紹介します。
特に体力度のグレーディング「4~5(1泊以上を推奨)」という指標は、日帰りするかどうか迷う微妙なところです。
今回は登山道の整備も良く、単純に体力の有無を確認し易い山をご紹介致しますが、同じ体力度でも、技術度が変われば体力の消耗も大きくなることは忘れてはいけません。
山のグレーディングをおさらい
山のグレーディングについて、重要な部分をおさらいします。
(毎度同じ内容を記載していますので、既にご理解されている方は飛ばして下さいね)
グレーディングを公表している都道府県と地域
- 新潟県 101ルート
- 山梨県 123ルート
- 長野県 123ルート
- 静岡県 82ルート
- 岐阜県 75ルート
- 群馬県 85ルート
- 栃木県 82ルート
- 石鎚山系(四国)50ルート
- 山形県 103ルート
- 秋田県 33ルート
設定の前提
- 【年齢および経験】40〜50歳の登山経験者
- 【登山構成】2〜5名のパーティー
- 【装備の重さ】山小屋利用を前提とした装備
- 【登山時の天候】夏山の晴天時
グレーディングが指し示す意味
体力度
グレーディング | 推奨される行動 |
1〇~3〇 | 日帰りが可能 |
4〇~5〇 | 1泊以上が適当 |
6〇~7〇 | 1~2泊以上が適当 |
8〇~10〇 | 2~3泊以上が適当 |
技術度
指標 | 登山道 | 技術・能力 |
A |
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おススメの雲取山(中級編)体力度の観点から
体力度については、「4」以上が設定されている場合は日帰りが推奨されていません。
しかし実際は日帰りを行う健脚な人が居るのも事実です。
ここに紹介する山は体力度を中心に測った中級者用の山で、健脚であれば日帰りも可能であるが、通常は山小屋などで1泊し、翌日もしっかり歩けることが必要となる場所です。
体力度の観点は、登山スピードが速く1泊以上を要する山でも日帰りが可能か否かを問うのではなく、2日間、3日間と継続して安定した体力を維持出来るのかに視点を置くべきです。
故に、ここで紹介した山を日帰りで登山することを推奨してる訳ではないことをご理解下さい。
5B 東京で一番高い山「雲取山」
雲取山は東京で最も高い場所です。
この山は最も短い登山ルートである「鴨沢」からでも往復20km以上あり、コースタイムは休憩を入れると10時間以上、一般的には1泊を要する行程が標準となっています。
しかし、健脚者であれば5~7時間、トレラン登山者の早い人では4~5時間程度で往復することも可能。
自身の体力と相談しチャレンジすべきですが、残念ながら日帰り行程の登山者による滑落事故も少なくないことを知っておきましょう。
滑落の発生は下山時に集中し、特に登山口まであと1時間以内という疲れがピークの場所で発生しています。
登山道の整備は良い場所ではありますが、行程の半分程度は片側が切り立った登山道のため、一歩間違えば滑落がいつ起きてもおかしくない場所も。
詳しい情報は「七ツ石小屋」ホームページ「雲取山登山の注意点」に記載されていますので、是非一度読んでみて下さい。
万が一のためにストックを携帯していくことをおススメします。
雲取山とは
七ツ石山から雲取山を望む(著作権=筆者)
隣接する県 | 標高 | 名山選定 | 山塊 | 登山口 | 距離 | CT |
東京/山梨/埼玉 | 2,017m | 日本百名山/新日本百名山/花の百名山/新花の百名山/山梨百名山 | 奥秩父 | 鴨沢 | 23.7km | 9:42 |
登山道のバリエーション(前半)
雲取山の行程の半分近くは森林帯を歩き、緩斜面と少し急な場所は交互に現れます。
熟練の登山者であれば緩いと思う場所ですが、登山に慣れていない人にとっては永遠に続く坂道がとても辛く感じますね。
1枚目の写真は登山口から程なく進んだ場所です。鴨沢ルートは途中の「七つ石神社」を目指す道として、古くは参道であったことから雰囲気のある登山道です。
しかし、この様に眺望の無い風景が通常2時間以上続くのは苦行でもあるのですよ。
鴨沢ルート「雲取山」(著作権=筆者)
2枚目は滑落事故が集中している周辺の写真で、注意を喚起する看板が設置されています。
双方の写真ともに片側は常に切り落ちており、緊張を強いる程ではないですが、転び方次第では滑落してもおかしくない場所。
2018年の秋には、立て続けに日帰り登山者による3件の滑落事故が発生し、内1件は死亡事故に至る最悪の結果を招いています。
鴨沢ルート「雲取山」(著作権=筆者)
3枚目は七ツ石小屋です。通常はこの小屋か、鴨沢ルートでは山頂を越えた先にある雲取山荘で1泊します。
七ツ石小屋近くは多少角度が急になりますが、ここまではほぼ緩やかな登りが続く。
鴨沢ルート「雲取山」(著作権=筆者)
登山道のバリエーション(中盤)
登山の中頃である七ツ石小屋の先は、七ツ石山へ向けて比較的急登となります。
山を巻くルートもありますが、橋を渡ったり、切り落ちたガケ沿いの登山道が前半以上に厳しいためおススメしません。
1枚目と2枚目は七ツ石山へ続く道で、比較的急登となります。
鴨沢ルート「雲取山」(著作権=筆者)
鴨沢ルート「雲取山」(著作権=筆者)
3枚目は七ツ石山を越え緩やかな尾根歩きとなる登山道ですが、この後山頂に近づくと、比較的急登となる場所をいくつか通過することになります。
鴨沢ルート「雲取山」(著作権=筆者)
参考までに七ツ石山を巻くルートも紹介しておきます。
登山道が狭く、右側に比較的緊張するガケがあるのと、水が流れる横を通過しなくてはならない橋を渡る場所が分りますか?
鴨沢ルート「雲取山」(著作権=筆者)
鴨沢ルート「雲取山」(著作権=筆者)
登山道のバリエーション(後半)
後半は富士山を望める気持ちの良い尾根道を歩き、山頂へ近づくまでにいくつかのピークを越えて行きます。
山頂直下の登りが最後のひと踏ん張り所。
鴨沢ルート「雲取山」(著作権=筆者)
鴨沢ルート「雲取山」(著作権=筆者)
ここまで5時間で登れば標準的と言えるでしょう。
帰ってからの膝のケアはお忘れなく。
体力度中級の雲取山登山のまとめ
体力の考え方は色々な視点があります。スピードがあってもその日だけの場合や、歩く速さは遅くても何日もそのペースを持続出来る人など。
登山的な観点で考えれば、体力が持続するかどうかが、体力度の指標であることは間違い無いでしょう。
もちろん、爆発的なスピードもあり、その体力が何日も持続出来るならそれに越したことはありません。
しかし、最も危険なのが「ギリギリ」の人です。
過去の雲取山遭難事故は、この「ギリギリ」の人が招いた結果で、決して自分の体力や技術を過信していた訳ではないでしょうが、長い時間、長い距離を歩く登山には「絶対」がありません。
ケガや体調不良も考慮し、余裕を持った計画は当然として、引返す選択も視野に入れることが重要です。
登山に慣れ始め、自分の体力を図る機会を実行する場合は、やはり「余裕のある」計画を前提に、体調と天候の良い日に遂行するよう務めて下さい。
山は各人の「コンテンジェンシープラン」能力が試される場所です。
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Let’s start climbing!