この先はあなた次第|自分の力量や山への愛着度によって変わる方向性

STEP12 IC 旅のエビデンス

登山を行うメリットは既に多くの方が理解出来たと思います。

登山をスポーツと捉えた場合、その多様性は万人の力量に合う選択肢を無限化しますが、一つ注意しなくてはいけないのは、「決して無理をしない」ということです。

 

ここまで、登山の選択肢は大きく「体力度」と「技術度」の二点で評価して来ましたが、最終的な「判断能力」は個々に依存されることを忘れてはなりません。

 

エリート アルピニストでも命を落とす

Let's_start_climbing058

 

ここで紹介してきた山は全て、整備された一般の登山道を歩むルートです。

山のグレーディングという難易度の指標は、この「一般登山ルート」を評価したもので、これ以外のルートはバリエーションルートと呼ばれます。

 

バリエーションルートという世界

Let's_start_climbing059

 

バリエーションルートの解釈は「登山地図に無い道(未推奨)」で、一般的には以下のような場所となります。

 

  • 積雪によってルートが分からなくなった登山道を歩く
  • 登山地図に記載が無いルート
  • 絶壁などのロッククライミング

 

見て分かる通り、登山地図で表されたルートは「推奨ルート」であり、常に危険が伴う登山であることには間違いありませんが、その中でも「比較的安全に歩ける道」として紹介されているわけです。

グレーディングは存在しないか、あってもマニア向け

一方、バリエーションルートは大きな危険が伴う場所が多く、雪山登山者にとっては名の知れたルートでも夏山を対象としたグレーディングで評価はされませんし、もちろんルートも明示されません。また、ロッククライミングについても、愛好者の間ではルートの名前があっても、一般的な登山道としては決して記されることはないのです。

山にのめり込んだ人の行き場所

これらの登山は、一般登山道が物足りなくなった一部の上級者や、アルピニストと呼ばれるプロ登山家が行う究極の登山だと考えて下さい。もちろん、バリエーションルートと言っても難易度はピンキリですので、登山中級者程度でも、経験者と共に優しい冬山へ登ることも可能です。

 

アルピニストという存在

Let's_start_climbing060

 

皆さんは「ピオレドール賞(フランス語:Piolet d’Or)」というものをご存知でしょうか?

これは、登山界のアカデミー賞と言われ、後世に残る偉業を達成した登山家へ送られる最も権威ある賞です。

 

単純に8,000m級の山を沢山登ったなどの評価ではなく、新しい(未踏)ルートを開拓したり、未登頂峰への登頂成功など、人類史に残るような活躍が受賞の条件となります。

 

こんなにも凄いピオレドール賞を受賞した日本人は、2008年の初受賞から2018年までの間に11名(2回受賞者1名)と、決して少なくありません。世界最高峰の登山家として名を連ねたのだから、安全対策についても一流であったことは想像出来るでしょう。

 

しかし、世界最高峰のアルピニストであっても、ほんの少しの油断が命取りとなったり、自然の驚異には抗えることが出来なかったことで、残念ながら命を落とした方も居られます。

女性であることが不利になった?

Let's_start_climbing061

 

ピオレドール賞を受賞した日本人の中で特筆されるのは、2009年、女性として史上初の栄冠を受けた「谷口けい」さんが上げられます。谷口さんは、日本人として唯一二度の受賞を受けた「平出和也」氏と共に、 カメット峰未踏の南東壁登攀が評価され、女性として初のピオレドール賞を受賞しました。

 

カメット峰と言われても普通の人ではピンと来なくて当たり前で、それ程、我々の取組む登山とは全く違う世界の話であると考えて下さい。

 

この偉大な女性は、2015年12月22日に43歳という短い生涯を閉じてしまいました。

 

当時の新聞には大きく取り上げていたと思いますが、登山に興味の無い人には「単なる遭難事故」の一つだったかもしれません。しかし、谷口さんの偉業を知っている人たちにとっては大きな出来事で、そして何故その事故が起こったのかが最大の関心事だったはずです。

 

遭難が起きたのは、北海道 大雪山系黒岳(1984m)の北壁を5人のパーティ(谷口さん以外は男性)で登攀中、山頂付近での出来事でした。世界的なアルピニストなので、普通の登山道ではなく、岩壁を命綱を結んでクライミングを行っていたことは伺い知れると思います。

 

なお、遭難の内容は、滑落。

 

世界的なクライマーでもある彼女であれば、常に安全を考えた措置で登攀していた筈で、万一、ルートミスをしても、少なくとも「命綱」が最後の保護壁となっていたのに何故滑落したのか?

 

そこには、女性としての悩みが介在していたそうです。彼女は滑落前に仲間へ「お花摘みに行く」と言い残し姿を消しました。お花摘み?冬山で何か特別な高山植物があるのか?と最初は思いましたが、登山用語(隠語)で「用を足す」ことであることを後で知りました。

 

男性であれば、多少の恥じらいがあっても比較的大ぴらに行えますが、女性の場合は簡単ではありません。更に、クライミングでは安全を確保するロープを保持するシステムを太ももへ装着するため、下半身全てを出さなくてはならない女性にとっては命がけの行為となるのです。

 

滑落が発生した要因は当事者にしか分かりません。しかし、状況を鑑みる限り大きな問題はこの2つが想像できます。

 

  1. 命綱を外さなければならない状況(衣服の着脱)
  2. 男性の視線から出来るだけ離れるためにガケに近づいた

 

「命綱」が繋がっていなかったことで「万一の出来事」を回避出来なかったことは、正に一瞬の油断としか言えないでしょう。超一流のクライマーなのに「魔が差した」としか言えません。

 

そして、女性の心理としては用を足す行動は男性同様とは行きません。過去のインタビューでは、女性の用足しの危険性に触れ、本人はあまり気にせず、普通の女性よりも男性に近い場所で用を足すことも語っておられたようですが、それでも男性同様とは行かないのは当たり前です。

 

実は登山の難点として、トイレの設置個所が少ないことが上げられます。有名な山であればそれなりの設置を施していますが、無名な山の場合は、駐車場から山頂まで全くトイレが無いこともあります。増してや、一部のアルピニストが行うバリエーションルートであれば尚更不便であること言うまでもありません。

 

「命綱」が繋がった状態で用を足せることが出来たら・・・

すぐ横で用を足すことが出来るほどの信頼関係があれば・・・

 

事故を避けられる「タラレバ」はいくつも上げられますが、それ以上に登山を行う人間が認識すべきことは「~かもしれない」という交通安全同様の言葉じゃないでしょうか?

自然の驚異には太刀打ち出来ない

Let's_start_climbing062

 

ピオレドール賞を受賞した日本人で、もう一人惜しくも命を亡くした方が居ます。

2008年に天野和明氏、佐藤裕介氏と共に、カランカ北壁初登攀を果たした一村文隆氏です。

 

一村氏に関する情報は少なく、一部にはピオレドール受賞に関しても、自身が納得の行く登攀では無いことを理由に授賞式へ出席しなかったという話もあり、相当ストイックな登山を行っていた方だと伺い知れます。

 

一村氏が遭難したのは2018年、チャムラン西稜6000m近辺で、北壁下降路の偵察中にアクシデントにて遺体で発見されたということです。

 

詳しい理由は分からないのですが、想定出来るのは「雪崩」か「滑落」になります。ただ、一村氏の実績を考えると、滑落は想定し辛いでしょう。雪崩であれば、その脅威を事前に予期することは難しく、また、発生の可能性が常に付きまとう場所である以上、確率をゼロにすることは人間には出来ないのです。

 

一般的な登山であっても、天気予報はあくまでも確率であって、想定外の天候となることも否めません。登山には常に「絶対」は無いことを改めて認識する必要があります。

登山の方向性はいくつも存在する

Let's_start_climbing063

 

ここまで、登山の方向性としては「頂点」の部分を紹介してきました。

しかし、人間は個々の能力があって、誰しもバリエーションルートなどの一般登山の先へ進むわけではありません。あくまでも極端な例として受け止めて下さい。

 

仮にバリエーションルートへ進んでも、比較的安全と言われる晴天時の積雪登山が限界だと思います。その先へ進むには色々な物を犠牲にしなくてはならないことも分かってくるはずですから・・・

 

通常、中級者向けと言われる山をクリアーすれば、日本百名山の完全制覇や地元の百名山制覇などが眼中に入るでしょう。日本の一般登山ルートは「8E」が最高レベルとなり、このレベルまで辿り着く人も稀です。

 

それでは、通常はどのレベルを目指すのでしょうか?

 

答えは簡単です。多くの人はグレーディングの最高レベルまで達することは難しいので、自分のレベルに合った山を選択するしかありません

 

大切なことは自分の力量を過信せず、他人に迷惑をかけないこと

Let's_start_climbing064

 

昨今、登山ブームと言われ久しいですが、特にこのブームを牽引しているのが「定年世代」です。即ち、65歳前後から登山を始める方が大勢いるのです。

 

そこで問題になってきたのが「プライド」

会社以外では「その他大勢」であることを認識していない

この年代の多くは、会社ではそれなりのポストに居て、会社内とその他を混同する傾向にあります。特に問題となるのが、順番を守らなかったり、山の特殊性を理解していないことです。

 

登山道は一般の舗装道路とは違い、多くの危険が潜んでいます。例えばクサリ場などは一人ずつ通過するのがマナーですが、それを後ろから追い越そうとする人の多くがこの定年世代です。この身勝手な行動により、滑落や転倒のリスクが増加することは誰にでも分かることですよね。

 

また、山小屋という特殊な宿泊所をあたかも「普通の旅館」と勘違いし、山のルールに従わないことによるトラブルも多発しています。

計画性と畏怖の念が欠如

そして最も問題となるのが「過信」です。

遭難者の大半が40代以上の中高年に集中しています。ネットで遭難情報を検索してみて下さい。実は40代以上と言っても「60代~70代」に実は集中していることが分ると思います。

 

サラリーマン時代に培った体力が、実は山でも結構通用すると思う方も居られるでしょう。それは素晴らしいことですが、その体力に過信は禁物です。山では想定外のことが良く発生しますので、体力には余裕を持って計画を組むことが特に重要となるのです。

 

高齢者の遭難の多くが「無謀」な計画であったり、「装備の不足」が原因となっています。どんな問題が起きているのかをきちんと理解し、会社員時代は偉かった方でも、フィールドへ出ればただの一個人(その他大勢)であること真摯に受止め責任のある大人の行動をしましょうね。

山には山のルールがあることを真摯に受止める

このブログでは、登山は健康に良いことを解説し、出来れば多くの方に山の素晴らしさを知って欲しいと思っています。しかし、どんなスポーツでもルールがあるように、自然という誰しも太刀打ち出来ないフィールドを楽しむ登山にもルールがあることを知って欲しいのです。

 

定められたルールブックはありません。ほとんど全てが「不文律」のルールですが、このルールは多くの教訓から生まれた先人たちの知恵であることを理解して下さい。

 

ルールに対する審判は居ませんが、敢えて言うならば、山を知り尽くした(少なくとも周辺の山は)小屋番を審判として捉えれば、口うるさく言うのも納得出来るのではないでしょうか?

登山にはゴールが無い

登山に力量が人よりかけ離れているのなら、グレーディング以上の先を目指せば良いでしょう。

登山技術や体力が無くても山(自然)への愛情を感じられるなら、常識のある行動と共に山を愛しましょう。

 

山へ行っても自分は偉いという殻から出られないのなら、登山は止めましょうね。

 

 

ステップ01:登山のススメ!|登山は身体も心も健康に保つ最高の運動方法って知ってる?

ステップ02:山の難易度を知る|登りたい山の体力度や技術度を理解する

ステップ03:安全な登山|登山には多少のリスクがあることを理解する

ステップ04:登山の目標|登山を継続する目標の立て方

ステップ05:道具を揃える|自分の登山スタイルを固めて準備を整えよう

ステップ06:登山計画|登山に便利な地図アプリを使いこなす

ステップ07:自分の体力を知る|簡単な山でも登山とウォーキングでは大きな違い

ステップ08:最初のステップアップ|先ず最初に目標とするおすすめの山

ステップ09:次のステップアップ(技術度)|少し大変な山にも安全第一で挑戦しよう

ステップ10:次のステップアップ(体力度)|少し大変な山にも安全第一で挑戦しよう

ステップ11:次のステップアップ(複合)|少し大変な山にも安全第一で挑戦しよう

ステップ12:この先はあなた次第|自分の力量や山への愛着度によって変わる方向性