農鳥岳|白峰三山で最も山深い場所へ誘うトレッキングガイド

Noutoridake trekking guide_IC 旅のエビデンス

南アルプスの白峰三山縦走は、登山を始めた方なら誰でも憧れるルートでしょう。

そんな方なら「農鳥岳」はきっとご存知♪

 

しかし、日本百名山ハンターの方々にとっては、行くに値しない山なのです。

白峰三山とは、北岳、間ノ岳、農鳥岳を縦走するルートですが、農鳥岳のみ日本百名山に含まれません。正確には日本二百名山、新日本百名山であり、十分評価されている山ですが残念なことです。

 

そんな「農鳥岳」、実は南アルプスの北部としては最も南側にある3,000m峰で、山頂からの眺望は甲斐駒ヶ岳や仙丈ヶ岳とは少し違って、南アルプス中部の雄である「塩見岳」や南深部の山々がとても近く望めます。

 

また、南へ近づくことで「富士山」も近く大きくなり、雲海をまとった幻想的な山々の姿は、北岳や間ノ岳を登っただけでは味わえない絶景です!

 

ここでは、最もオーソドックスな間ノ岳側(北岳側)からの登山方法を解説します。間ノ岳から先へ進む登山者は大幅に少なくなり、ちょっぴり謎めく「農鳥岳」の魅力を覗いてみましょう♪

 

なお、北岳へ至る登山ルートと間ノ岳への解説は下記の記事にありますので、本記事では間ノ岳から先のルートを徹底解説!

 

 

登山道具の整理に便利! こんな箱知ってました?

 

登山データ

この記事に関するデータです。

 

■時期 夏山(6月~8月)
■移動手段 自家用車
■利用駐車場 広河原駐車場
■移動 芦安バス停(5:15)~(6:15)広河原
■登山開始時刻 6時30分(広河原)~15時40分農鳥小屋泊
■登山終了時刻 翌5時15分発~6時50分(農鳥岳山頂)
■活動時間(休憩含む) 10時間45分(八本歯のコル経由)
■本内容のペース 休憩含まない「CT 11時間10分」に対し「0.96」~普通

 

活動時間に関する注意点!

今回の登山情報は、広河原から八本歯のコル経由で農鳥岳で至ったルートの内、間ノ岳から農鳥小屋に宿泊し「農鳥岳」までのルートを解説しています。

間ノ岳から農鳥岳までのルートは1本(北岳方面)なのでシンプル。

 

なお、このルートの標準CTについては、地図会社やソフト会社により大きくバラつきがあります。今回は「YAMAKEI ONLINE」という、無料のWeb上で確認出来るコースタイム(CT)を採用。

 

間ノ岳と農鳥岳間で大きくCTが変わる箇所は、農鳥小屋を中心に、下り部分と登り部分の二つだけです。特に間ノ岳を下るルートは急峻な斜面で滑り易く、下りが苦手な人は大きくCTが遅れる可能性があるので注意が必要です。

 

また、体力に自信があっても「農鳥岳」までの日帰りは現実的ではありません。必ず「北岳山荘」か「農鳥小屋」の何れかに一泊するか、体力に自信が無い場合は「白根御池小屋」に前泊する日程を組むことをおススメします。

 

人気の山である北岳を通るルートは、ハイシーズンの週末となれば登山道で渋滞が起こります。渋滞の規模は富士山ほどでは無いにしても、思い通りのペースで歩けない場合もあるので余裕を持った計画が必要です。

 

3D登山ルート

今回のルートを3D動画にしました。迫力ある動画と登山ルートの高低を確認しましょう♪

動画は白峰三山と白峰南陵を縦走した記録ですが、19秒から30秒の間が間ノ岳と農鳥岳のルートになります。

 

Shirane sanzan & Shirane nanryo root

自身の山行を3D動画に出来るReliveの使い方こちらから。

 

 

農鳥岳への登山ルートガイド

初心者を意識した登山ガイドとなるため、少し細かく長いですが写真は綺麗です♪

必ず行きたくなりますが、実際に登山を行う際は再度見直して下さいね。

 

登山ルートの紹介

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農鳥岳登頂パターンは3つ
  1. 北岳方面(間ノ岳経由)からのルート
  2. 塩見岳方面からのルート
  3. 奈良田~大門沢方面からのルート

 

農鳥岳だけを直接登る場合は、3番の奈良田~大門沢方面からのルートを利用しますが、標高差2,000m以上の険しい登山道を登るため上級者向けです。ここでは、最もポピュラーな1番の「北岳方面(間ノ岳経由)からのルート」を解説します。

 

なお、2番の塩見岳方面からのルートは最も上級者向けで、1泊程度では遂行出来ないレベルなので割愛。

北岳側から農鳥岳山頂を目指すルート計画は1つだけ

北岳方面からアプローチして、間ノ岳を経由し農鳥岳へ至る場合、間ノ岳以降の登山道は1本道となります。そこで悩ましいのが、宿泊場所をどこにするか?

 

間ノ岳から農鳥岳へのルートは単純ですが、その後どこへ至るのかが重要なカギ。

 

  1. 大門沢経由で奈良田へ下山(最も人気)
  2. 農鳥岳の先にある「南陵エリア」まで縦走する
  3. 農鳥岳をピストンし北岳方面へ戻る

 

起点は「①北岳山荘」「②農鳥小屋」の二択しかありません。

各々、広河原から八本歯のコル経由で至る標準CTを把握します。なお、北岳山頂を踏む前提で計算。

 

①北岳山荘まで=6時間55分

②農鳥小屋まで=9時間35分

 

広河原出発を6:30とした場合、北岳山荘には13:30前後には到着できるので安全。しかし、農鳥小屋まで行く場合は16:00前後となりますので、雷などが発生したら少し危険な計画になります。

 

先ず、1番目を検証しましょう。

 

①北岳山荘から大門沢経由で下山=11時間20分

②農鳥小屋から大門沢経由で下山=08時間40分

 

最もポピュラーな下山ルートですが、北岳山荘からは11時間以上を要するため暗い内から危険な山行が要求されます。明るくなってから行動する場合は、途中の大門沢小屋で一泊追加する方が安全。一方、農鳥小屋からであれば明るくなってからの行動で十分間に合います。

 

次に、2番目について

 

①北岳山荘から笹山(黒河内岳)を経て奈良田へ下山=13時間50分

②農鳥小屋から笹山(黒河内岳)を経て奈良田へ下山=11時間10分

 

これは何れも途中に山小屋は無く、更に時間もかかるため宿泊が伴う場合はテント装備が必須。農鳥小屋からであれば、出発時刻次第では下山可能ですが、それなりの経験と体力が必要。間ノ岳から先、農鳥岳を目指す人は少なくなりますが、このルートは更に人が少ない上級者コース

 

では、3番目はどうか?

 

①北岳山荘~農鳥岳~八本歯経由で下山=12時間45分

②農鳥小屋~農鳥岳~八本歯経由で下山=09時間45分

 

何れも北岳山荘または農鳥小屋にもう一泊するのが普通です。大門沢から奈良田へ下山するルートと比較して効率的とは言えません。もし、無理に下山するとしても、北岳山荘を起点とした場合はバスの時刻に間に合わず、広河原山荘で一泊することになります。

 

結論としては、標準CT以上で歩く体力があれば農鳥小屋を目指し、翌日大門沢から下山。体力が無い場合は北岳山荘を目指し、翌日は大門沢小屋(または農鳥小屋)でもう一泊する必要があります。

 

間ノ岳から農鳥小屋まで

下山計画については、別途各人の都合で計画するとして、ここではシンプルに間ノ岳と農鳥岳間の登山道情報を解説します。

 

先ず、登山ルートの開始は間ノ岳山頂の少し先にある「方向を示す標柱」からです。

農鳥小屋まで1.8km、1時間10分。農鳥岳山頂まで3.8km、2時間30分が示されている。

 

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間ノ岳山頂から少し進むと幻想的な農鳥岳が望める

天気の良いだけですが、間ノ岳山頂からは大きなコル(鞍部)の先にある農鳥岳の頭が望めます。距離があり、間に遮るものが無いため、その姿は遠近感を無視したまるで絵画のような山容。

 

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農鳥岳へ誘うペイントは今までの様相と変化?

白峰三山縦走経験者や興味のある人達の間では有名ですが、道迷いを防ぐために施されたペイント、この先からは色合いの雰囲気が大きく変わってきます。赤と黄色を基調とし、場所によってはおどろおどろしいその色合いは、実は登山者の安全を考えた末の配色なのです。

 

 

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そして、そのカラーリングこそが、南アルプスで最も厳しいオヤジさんが居る「農鳥小屋」のテリトリーに入ったことを示します(笑)。

 

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農鳥岳の雄大な姿に息を飲む!

間ノ岳から歩を進め暫くすると、農鳥岳の全容が望めます。

標高差約300mのコル(鞍部)から遮るものが何も無いその姿は、北岳から間ノ岳への縦走路とは大きく異なり、南アルプスの雄大さを改めて認識させられる稀有な稜線。

 

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間ノ岳の裏側(農鳥岳側)は広大なガレ・ザレ場

間ノ岳山頂から農鳥小屋がある鞍部までは、約300mの標高差を下ります。登山道の大半は急斜面のガレ・ザレ場を永延と下るため緊張を強いられ、思いの他時間がかかるかもしれません。

 

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途中、塩見岳方面(仙塩尾根)へ向かう標識が現れます。

 

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絶景の農鳥小屋

間ノ岳山頂から標準CT1時間強で、標高2,800mの農鳥小屋に到着します。

農鳥小屋は他の小屋とは一風変わった小屋。写真左手に見えるドラム缶には小屋主のオヤジさんがよく座っており、間ノ岳を下る登山者を監視しています。

 

そして、小屋の前を通りかかる登山者へ少しキツイ言葉を投げかけたりするそうですが、全ては遭難やケガを防ぐため、心配しての声掛け。と言っても、人によっては受け止め方が変わるようで、好意的に受ける人も居れば、その逆も多く、登山者の意見は賛否が分かれています。

 

私は実際に泊り、オヤジさんとも言葉を交わしましたが、言ってることは何一つ間違っていません。確かに少し古臭い内容もあり、人によっては気になる言い回しもあります。でも、決して登山者をバカにすることが意図ではなく、心配しての言動だと私には伝わりました。

 

小屋は古く、料理も美味しくありません。トイレも原始的です。

しかし、3,000m峰の真ん中にあるこのロケーションは、朝夕と下界では味わえない素晴らしい体験が行える所なので、行くべき価値は南アルプス随一の場所だと私は思います。

 

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農鳥岳で最も標高が高いのは、写真真ん中の出っ張った岩「西農鳥岳」です。

農鳥岳は更に左手へ進んだ場所にあります。

 

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農鳥小屋から農鳥岳まで

鞍部にある農鳥小屋から先は、いよいよ農鳥岳へ向かう登り。

標準CTは西農鳥岳まで約1時間。西農鳥岳から農鳥岳へは約40分の道のりです。

ザレた急登から山頂の稜線を目指す

農鳥岳へ向かう登山道は、写真のようなザレ道が九十九折に続きます。

急登と書きましたが、ビックリするほどの急登ではないので、滑らないよう気を付けながら歩きましょう。

 

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振返るとトラバース気味に登ってきたことが分ります。安全とは言え、滑落する可能性がある場所は多いので慎重に進みます。

 

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岩稜帯の横はトラバースします。

 

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西農鳥岳山頂直下①

農鳥岳は西農鳥岳の方が標高は高く、農鳥小屋方面からは最初に山頂を踏む場所です。

写真では、山頂直下から見て、標柱があることが分ります。

 

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農鳥小屋から続いたザレた急登が終わると、山頂直下は写真のような美しい稜線へ変わります。

農鳥岳登山で、最も気持ちの良い登山道。

 

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西農鳥岳山頂直下②

北岳からは遥か遠くに見えた塩見岳や、南アルプス深南部の山々が望めるのが農鳥岳の醍醐味です。

 

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そして、来た道を振り返れば北岳と間ノ岳、そして仙丈ヶ岳が望め、南アルプス3,000m峰が農鳥岳を含め7つ以上が見渡せます。

 

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早朝の西農鳥岳には、先行のカップルが既に登頂していました。

雲海とシルエットが幻想的な雰囲気を醸し出しています。

 

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この山域はカール地形が多く、滑落しないよう足もとには注意しましょう。

 

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西農鳥岳山頂

西農鳥岳の標柱の先には、間ノ岳とその奥に北岳、左側には仙丈ヶ岳が望め、鞍部(コル)には遙かかなたで小さくなってしまった「農鳥小屋」の赤い屋根が静かに佇んでいるのが分ります。

 

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農鳥岳へ

最終目的地の農鳥岳山頂には富士山がありました。

西農鳥岳からはトラバース道や岩稜帯を経て進むため、今までのルートでは最も険しい登山道となります。

 

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岩稜帯には進むべき方向がペイントされているので、指示通りに進めば大丈夫です。

 

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一端下へ降りるトラバース道も。

滑り易いので注意!

 

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いくつか岩稜帯を進みます。

 

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農鳥岳山頂が見えてきました。

トラバース気味の登山道は、歩き易いので安心です。

 

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農鳥岳山頂

農鳥岳山頂からは白峰三山縦走の軌跡が味わえます。ここまで縦走を行ってきた、これから縦走を行う、何れの登山者もこの風景は感慨深いことでしょう。

 

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間ノ岳山頂からここまで標準CTで2時間40分前後です。

標高差は下り300m程度、登り250m程度。距離3.8km。

アップダウンが明確で雄大な稜線歩きが堪能できますよ♪

農鳥岳の先

農鳥岳山頂を踏んだ大半の登山者が、写真の稜線を進み「大門沢下降点」から下山します(写真真ん中の平坦地)。そして、ごく少数ですが、写真の一番左に延びる「白峰南陵ルート」を進む場合があります。

 

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農鳥岳は、白峰三山の中では最も行き難い山であり、日本百名山にも名を連ねていないことから、縦走目的の登山以外ではあまり縁のない山かもしれません。

 

しかし、この山を訪れた登山者の大半は、「何故、百名山ではないのか?」という疑問を抱きます。それだけ雄大で神秘的な山、訪れて絶対損はありません。

 

メモ

紹介のコースは山梨県が発表しているグレーディングでは「7C」となりますが、これは奈良田から大門沢を経由して単独登頂した場合の難易度です。北岳山荘からなら「3C」相当、農鳥岳からなら「2C」程度の内容です(ピストン想定)。

 

山小屋泊を前提にすれば、体力的にも技術的にも中級レベルの登山ルートですが、決して無理をせず、そして慎重に進めば脱初心者には最適のルートです。

 

技術レベルは「C」なので、「B」が設定されている北岳の草すべりルートよりも、農鳥岳は少し難しいレベルであることが分ります。

 

しかし実際の登山道は同じ「C」の間ノ岳へのルートよりも険しく、特に西農鳥岳から農鳥岳の間は岩稜帯の岩登りもあるため、農鳥岳が最も難易度の高い登山道だと考えましょう。

 

なお、北岳、間ノ岳同様に3000m以上、天空の稜線歩きになるので、風も通り天候によってはとても厳しい気温となります。また、遮る物もなく、足場も同様に悪くなるので注意が必要。

 

しっかりとした登山装備を整えて下さい。

なお、初春や晩秋には雪が残っていたり雪が降ることもあるので、アイゼンなどの装備も忘れてはいけません。

登山地図は必ず準備!

整備が良くても道迷いする人は必ず出ます。自分は違うと思っていても、いつ同じように遭難するかわかりません。

必ず登山地図を準備しましょう。

 

 

登山道具の整理に便利! 道具の整理も忘れずに♪

 

登山道へのアクセスなどの基本情報はこちらの記事で。