登山靴の種類は登山スタイルや価格によって多種多様です。
しかし、その中でも皆さん一度は憧れるのが「革製(オールレザー)の登山靴」でしょう。
革製(オールレザー)の登山靴ってカッコいいけどメンテナンスとか面倒じゃない?
って、思う方も多く、ネット上では結構メンテナンス方法なんかが溢れています。
でも、その内容は備忘的なものが大半で、細かい「知りたい」情報がイマイチなんですよね。
有名な登山靴販売店では、商品を買わないと「秘儀」は教えてもらえないし、中々良い情報も見当たらない。
そんな方は、是非この記事を参考にしてみて下さい!
ビジネスシューズ(リーガル他)を10足近く保有し、日々メンテナンスを行ってきた経験(関係ないって!?)から導き出した
登山靴に最適なメンテナンス方法の詳細を3回に亘って解説致します。
この記事で使用した革製(オールレザー)登山靴について
今回、サンプルとして使用した登山靴は、SCARPA KINESIS PRO GTX(スカルパ キネシス プロ GTX)です。
サンプルと言っても、最近自分用に新調した登山靴な訳ですが・・・
出典:ロストアローオンラインストア
革製(オールレザー)登山靴 革の種類について
革製(オールレザー)登山靴と一括りに言っても、その表情(表面の風合い)や革の種類は多種多様です。
ここでは、SCARPA KINESIS PRO GTX(スカルパ キネシス プロ GTX)に使用される「オイルドヌバック」を前提に解説しますが、以下のような代表的な登山靴にも応用可能です。
同じメンテナンス方法が応用可能な革製(オールレザー)登山靴
現在流通中の革製(オールレザー)登山靴の代表的な物を抽出し「風合い」で層別しました。
ここで一つ面白いことに気づきませんか?
そう、有名なローバータホーですが、購入者のインプレッションを読むと「スエード」の風合いを壊したくない。
なんてことがよく書いてあります。
実は革の登山靴の多くは「Nubuck leather(ヌバックレザー)」という共通の皮革製法。
皮革製法の違いは後述しますが、結局は革表面の毛羽立ち感が違うだけと頭に入れておきましょう。
バックスキン(スエード)【風(っぽく見える)】モデル
(ヌバックレザー)
- LAWA TAHOE PRO GT WXL(ローバー タホー プロ GT WXL)
- LAWA TIBET GT WXL(ローバー チベット GT WXL)
- Hanwag ALASKA GTX
- Hanwag YUKON
- Hanwag TATRA II GTX
銀面(表革)モデル
(ヌバックレザー)
- SIRIO(シリオ) R.F.530
- SIRIO(シリオ) R.F.630
- SIRIO(シリオ) R.F.640
ワックスドレザー
- Zamberlan ザンバラン トファーネ NW GT
- Zamberlan ヴィオーズ LUX GT
- Zamberlan ヴィオーズ PLUS GT
タンブルレザー
- Zamberlan セコイア GT
プルアップレザー
- GRANDKING(Caravan) GK84
- Goro(ゴロー) プーティエル、ブーティエム
大体この辺りが「拘り」のある人が購入する登山靴かと思います。
そして、このほとんどがNubuck leather(ヌバックレザー)。
一部ZamberlanやGRANDKING ではFull grain leather(フルグレインレザー)という最高品質の革を使用しています。
一方、本物のスエード革(バックスキン)を使用した登山靴もあります。
本当にスエードを使用したモデル
- SIRIO R.F.330=Suede leather(スエード(スゥエード)レザー)
- Goro(ゴロー) C-06 S-18 S-8=イタリア製裏出し皮革
登山愛好家には革靴と言えば「Goro(ゴロー)」が有名ですね。
履き古した年季のある靴にも係わらず、メンテナンスをしっかり続けた登山靴を時折見かけます。
そして、それらに共通することですが、全て「黒い(オイルドブラック)」登山靴になっていること。
でも、「Goro(ゴロー)」の登山靴って、元はこんな感じなのです。
出典:Goro(ゴロー)公式サイト
元々本当のスエード(バックスキン)なので、ローバータホなどの「そんなように見える」靴とは違い、風合いも毛羽立ちも段違いです。
そんな登山靴であっても、結局はワックス処理を行わないと長持ちしないのです。
オールレザー(革)の登山靴に使用される主な皮革
オールレザー(革)の登山靴に使用される革の主な3つの皮革製法を解説します。
大半はヌバックレザー(Nubuck leather)で、高級品はフルグレインレザー(Full grain leather)という感じでしょうか?
共通するのは何れも「表革(銀面)」であるということ。
ヌバックレザー(Nubuck leather)
皮革の表側(銀面)をやすりやサンドペーパーをかけて「ビロード風」に細かく起毛加工したものを指します。
正式には「鹿革」を使用するようですが、現在では大半が「牛革」です。
この革にオイル(油)を染み込ませ、撥水性や耐久性を上げたものが「オイルドヌバック」。
フルグレインレザー(Full grain leather)
銀面を磨いたりスムース加工などをせずに自然なまま鞣した革を指す。
手を加えない自然の美しさを持ち、且ち、一切加工を施さないことでも耐久性としなやかさ有す革を選定するため、貴重で価値の高い最高級の革。
スエード(スゥエード)レザー(Suede leather)
なめした革の「裏面」をやサンドペーパーなどで磨いて起毛させたもの。
二極化する「革の登山靴」に対するメインテナンス論
革の登山靴のメンテナンス方法には2つの主張があります。
主張①
革の登山口はスプレーのみでメンテナンスを行う。
- 起毛の風合い(一部はスエードと勘違い)を損ねないため
- 防水用のゴアテックス(GTX)の性能を損なわないため
結果…
- 2~3年でカラカラ、カサカサのお肌に変身
- 革としての機能は無く、風化するのを待つだけとなる事例が頻発
- 即ち、一般的に5年と言われるゴアテックスの寿命にも達しないまま引退
頻繁に登山靴を買い替えられる人向きのメンテ~買い替えで喜ぶ人ってこのメンテを推奨してる人?
主張②
革の登山靴は適度に栄養を与え、ワックスや防水処理を施し表面を堅牢化させる。
- 元々あった革の状態は「風合い」ではなく何もメンテナンスしていない状態である
- ゴアテックスまで油分が浸透することは無い(対応製品もある)
結果…
- 登山後のメンテナンス、ソール張替え耐久次第ではあるが10年以上使用できた
- ゴアテックスの寿命後も革の撥水効果で使用継続可能
- 山行後、毎回のメンテナンスが面倒である
どう考えてもこっちの方法が良い。
革製(オールレザー)登山靴のメンテナス準備
前置きが長くなりましたが、上述の通り「ワックスメンテ」が良いという結論とし、具体的な作業を行う前に、大事な準備を開始しましょう。
靴磨きの経験がある人のワックスへの疑問
ビジネスシューズを磨く際、ピカピカにしたい場合は「ポリッシュ」を最後に使用しますよね。
しかし、このポリッシュ、革が呼吸できなくなると言われるため、定期的にクリーナーで落とす必要がありました。
私はこのリムーバー作業が面倒なので、ビジネスシューズのメンテナンスには「モウブレイ」の「シュークリーム」だけを使用していました。
もちろん、靴の色に合わせ数種類。
それでも十分に革靴は綺麗になり、光沢も出ます。
ワックスって革に悪いのでは?
ここで疑問になるのが、革の登山靴をメンテナンス行う場合、その中心となるワックスの存在です。
ビジネスシューズでは定期的に落とす必要がある、いわゆる「ポリッシュ」と同じもので、こんな物を本当に重ね塗りしても大丈夫か?という疑問。
登山靴とビジネスシューズでは革の質(加工方法)が異なる
ここ、冷静に考えると分かるんですが、ビジネスシューズで使われる革ってその製法上完全防水に近いんですよね(断面からは染みますが)。
一方の登山靴ですが、多くのヌバック素材って吸水して染み込みます。即ち「通気性が良い?」とも言えます。
そこへ防水性のある「ワックス」を何度も重ね、やっとビジネスシューズ用の革並みの防水性となるわけです。
この時点では「ポリッシュ」入れる前の通気性を維持。
そして、更なる防水性を高めるために、後程説明する「防水ナノクリーム」を最後に塗って完成。
しかし、このクリームも「ポリッシュ」とは違い、防水透湿素材の通気性を損なわないという優れものなので安心なのです。
もっとも、登山靴でもポリッシュを使用して過度にピカピカにすれば問題があることは言うまでもありません。
ここで紹介する作業内容で、見栄えも防水性も問題なくクリアーします。
革製(オールレザー)登山靴を購入する前の準備
新品の革の登山靴であっても、ほとんどの登山靴がそのまま使用出来るよう想定されています。
その靴が醸し出す風合いを好んでいるなら、登山靴の寿命を延ばすことは諦めて、スプレーだけを使用したメンテナンスを行っても良いでしょう。
直ぐに風合いも無くなりますが・・・。
革は布などと比べ丈夫であることは周知の通りですが、ほっとけば同様に劣化します。
新品のまま使用することも可能ですが、事前の保護処理を行うことでより強い皮革表面を構成させることができます。
また、新品の内に保護処理を施せば、山行後のメンテナンスも楽になりますよね♪
登山靴を新調したら、直ぐにでも山へ行って履き慣らしを行いたいのが人の常。
そこをグッと堪えて新品の内に保護処理を行いましょう。
保護処理を最短で済ますためには必要なアイテムを事前に揃えておくことが重要です。
必要なメンテナス用品って?革製(オールレザー)登山靴を購入する前の準備
革の登山靴(オールレザー)で必要なアイテムは主に2つに分かれます。
先ず、ワックス類などの「消耗品」とこれらを靴全体へ広げたり磨きを行う「道具」です。
以降、具体的な製品と購入方法を細かく解説しますので、事前準備の参考として下さい。
消耗品革製(オールレザー)登山靴を購入する前の準備
Collonil(コロニル)レザージェル
フッ化炭素樹脂は、いわゆる「テフロン」のことで皮革の内部に浸透し、被膜を作ることなく防水効果をもたらすことが出来ます。
このフッ化炭素樹脂が配合されたジェルが皮革に浸透し、水や汚れから保護することを期待してベースとして使用します。
Collonil(コロニル)ヌバック+テキスタイルボトル
ローションタイプの液体製品ですが、謳い文句は「起毛皮革を新品時の柔らかな風合いに維持」とありますが、ワックスでほとんど潰れるので関係ありません(笑)。
重要なのは、ジェル同様にフッ化炭素樹脂が防水効果を発揮することと、登山靴で重要な「硬さ」を維持させる効果があることです。
また、色付の製品もあるためキズ隠しも可能ですが、まずはカラーレスを1本用意しましょう。
Collonil(コロニル)アクティブ レザーワックス
革製の登山靴用に作られた、保革・防水ワックス。
ワックス成分はオリーブオイルなどの天然成分(植物系)で、革への栄養とワックス効果が同時に期待出来ます。
また、重ね塗り(定期使用)推奨で、メンテナスを継続することで、耐久性と防水性のUPとカビの予防が出来ます。
Collonil(コロニル) 防水クリーム ナノ クリーム
軽量登山靴など、山行前には防水スプレーを処置すると思いますが、このクリームはそれと同じ効果があります。
革製品へ防水スプレーを塗布すると艶が無くなりくすんだようになりますが、このクリームは塗布後に磨き込みが可能。
なお、メーカーの説明内容は次の通り。
ナノ化されたフッ化炭素樹脂とシリコンオイルを配合した防水スプレーです。
革新的なナノテクノロジー効果で防水効果が長時間持続します。
素材表面に微細構造を形成し、ホコリや汚れを水滴とともに落とす自浄効果を与えます。
皮革や防水透湿素材の通気性を損ないません。
ということです。
以上、Collonil(コロニル) ばかりですが、登山靴に関しては他のメーカーが見当たりません。
ちなみに、Amazonで購入する際は全て定価販売。
但し、送料無料でプライム会員なら翌日配送となる一方、楽天とYahooでは送料必要でも、値引きしている店舗を上手く探せばトータルで安くなります。
しかし、店によっては配送に1週間前後要すので注意が必要です。
その他揃える必要のあるメンテアイテム(道具)革製(オールレザー)登山靴を購入する前の準備
靴用ブラシ
ブラシは必須で、出来れば二種類あると便利です。
先ず、クリームを全体に延ばしたり、ホコリ落としに使う「馬毛ブラシ」。
もう一つは艶出しのブラッシングや山行後の汚れ落としにも使用できる「少し硬いブラシ」です。
革をいたわるために両方「獣毛ブラシ」を推奨することが多いですが、正直、革はそんなに「やわ」では無いので、艶出用には化学繊維のブラシが安くて便利です。
靴を洗う時に使用するスポンジ
新品の際は、最初の行程を施す前に靴全体を濡らすために使用します。百均で十分。
余分なクリームをふき取る布
これはボロきれで十分です。
但し、革に影響が出ないよう綺麗な布を使って下さい。
気になる人はホームセンターの車用品販売コーナーで、洗車用の安いマイクロファイバーを買いましょう。
磨き用の布
同じく、マイクロファイバーでも可能ですし、化繊の要らない服などを適当な大きさに切って使用しても構いません。
パンストが一番良いというのが有名ですね。
革の登山靴のメンテ(準備編)まとめ
準備編では革の知識と事前に準備するメンテナンス用品について細かく解説しました。
ここで解説した革の種類以外については、その性質などを良く調べてから適切な処置を行って下さい。
また、ご紹介のワックス類は、新品の風合いに対し色が濃くなります。
特にベージュ色系の素材は油分により黒に近い色へ変化し、元の風合いは一切無くなることを理解しメンテナンスを行って下さい。
新品の革製(オールレザー)登山靴へ施す具体的な方法は「導入編」で詳しく解説を致します。
なお、メンテナンス方法について「絶対」はありませんので、各自自己責任で行うようお願い致します。
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