今回は、高卒勝ち組でも行ける「大企業」について解説します。
- 企業規模よる就業人口格差はあるのか?
- 大企業とはどの程度の規模なのか?
これらを分析し、実情を明確にしましょう。
何も知らない人は、わたしの記事で「大企業へ行くのは楽!」「給与も簡単に沢山もらえる!」と思った?
良い就職を最終目標とした場合、ハッピーな生活をおくれるような給与水準の企業に入るのはとても狭き門です。
狭き門であっても、入社する意味があることをこの記事で理解できると思います。
事実!実際に目の当たりにした「零細企業」労務者の実情は最悪でした…。
子どもの人生が心配なあなた、恐怖を感じて下さい。
大企業の定義ってなに?
実は、色々調べても「大企業」の明確な線引きは発見できませんでした。唯一、中小企業の定義については、「中小企業基本法第2条第1項」で業種ごとの定義がなされています。
当ブログでは、過去の記事を含め「製造業」を基準に解説していますので、参考までに「製造業の定義」を以下のとおり記載致します。
【中小企業基本法第2条第1項】
資本金の額又は出資の総額が3億円以下の会社並びに常時使用する従業員の数が300人以下の会社及び個人であつて、製造業、建設業、運輸業その他の業種(次号から第4号までに掲げる業種を除く。)に属する事業を主たる事業として営むもの
要約すると…
- 資本金 3億円以下
- 従業員 300人以下
これが正式な中小企業(製造業)の定義とのこと。
これを基準にすると、中小企業以外の企業規模定義は次の通りになる。
大企業とは?
- 中小企業の基準を超える企業
零細企業とは?
- 中小企業に含まれるので明確な線引きはない
大企業の定義、非常に広義ですね。わたしが今まで書いた「年収」などは、資本金3億円程度の会社を対象としていません。
一部上場は当然、資本金は100億円以上、従業員数1,000人以上。
そういう前提です(本来は企業の設立期間も重要「老舗」)。
一般的なイメージで定義する
ネットや書籍、国の統計を調べてもまちまちなので、一般的なイメージ(と思われる)内容で分類を行い分析します。
分類の考え方
大企業を一括りにすると、実情は中小企業と変わらないか、場合によってはブラック企業も含まれる可能性が出てきます。
わたしの経験から導き出される結論は、一概に「大きければ良い」「小さいければ悪い」ということにはなりません。
- 老舗企業(旧財閥系など)
- 大差なく安定度は高い
- 新興企業
- 安定性よりも成長性を優先
- 企業規模による「安住性」にばらつきが大きい
但し、企業の内実を推し量るのは難しいため、結果的には数値と種別で定義するしか無いでしょう。
企業(自営含む)の外面で定義すると以下のようになります。
定義 | 内容 |
---|---|
大企業 (大) | 一部上場 資本金100億円以上 従業員1,000名以上 |
大企業 (中小) | 資本金3~100億円程度 |
中小企業 | 資本金 3億円以下 従業員 300人以下 |
小・零細 企業 | 従業員2~3人の零細から 資本金2~3千万円程度 |
公務員 | 国家公務員 地方公務員 |
各種法人 | NPO法人 社団法人 財団法人 |
個人 事業主 | 自営業など |
上表の定義を基準に、以降の分析を行ます。
就業人口と割合
就業人口は年次で変動するため、ここでは前提を「6,000万人」とします。
就労人口「6,000万人」を基準に、前述で定義した企業規模ごとに就労人口を超概算で当てはめたものが以下の表。
就労先 | 就労人口 | 割合 |
---|---|---|
大企業(大) | 270万人 | 4.5% |
大企業(中小) | 330万人 | 5.5% |
中小企業 | 3,000万人 | 50.0% |
小・零細企業 | 1,000万人 | 16.7% |
公務員 | 400万人 | 6.7% |
各種法人 | 200万人 | 3.3% |
個人事業主 | 800万人 | 13.3% |
中小零細企業の就業人口の割合が70%近いというのが現実です。
実際は「派遣」「アルバイト」などで就労する人も多く、収入的に厳しい人の割合はもっと高くなるでしょう。
逆に、就労人口6,000万人の内、有利(そこそこ有利も含む)な就職が行えた割合は次の通りになります。
合計
1,400万人
23.33%
大企業 (大) | 270万人 | 4.50% |
大企業 (中小) | 330万人 | 5.50% |
公務員 (一応全部) | 400万人 | 6.70% |
各種法人 半分 | 100万人 | 1.65% |
個人事業主 ごく一部 | 300万人 | 4.95% |
合計で約1,400万人、割合としては23.33%ですが、実際の勤務環境までは加味していないことをご理解下さい。
「行く価値ある大学」を卒業した場合は
ある程度恵まれた就労環境にいる1,400万人の内、およそ500万人程度が高卒就職の勝ち組です。
高卒の勝ち組?
そう、大学へは進学せず、高校卒業と同時に大企業などへ就職した一部の人たちです。
この高卒勝ち組を除くと、約900万人(全体の15%)が大卒以上の学歴を有す人たちと考えられるでしょう。
「行く価値のある大学」の定義では、約21.7%の大学が価値のある大学としました。
年齢人口120万人(現在は100万人以下)と想定すると、年間約26万人にそのチケットが渡される計算です。
60歳定年だと就業年数38年、26万人×38年=988万人。
早期退職者や死亡、転職などを考えれば、ほぼ900万人になるため、「行く価値ある大学」を目指す意味は十分にあることが分かります。
生涯賃金格差を理解する
では、有利な就職を果たした場合とそうでは無い場合で生涯賃金に大きな格差が生まれるでしょうか?
賃金については、中小企業であっても高水準な場合もあり、また逆に有名な企業であっても低く抑えられている場合もあり一概には計れません。
以下に高卒、大卒、全て合算し、想定ゾーンを記載しましたが、あくまでも平均的な参考値として捉えて下さい。
なお、企業の場合は、役員まで出世した場合の大幅な増加分も加味していますが、役員出世は「常務」程度までを最高値としています。
就労先 | 就労人口 (万人) | 割合 | 生涯賃金 (万円) |
---|---|---|---|
大企業 (大) | 270 | 4.5% | 25,000~ 60,000 |
大企業 (中小) | 330 | 5.5% | 22,000~ 50,000 |
中小 企業 | 3,000 | 50.0% | 20,000~ 30,000 |
小・零細 企業 | 1,000 | 16.7% | 13,000~ 20,000 |
公務員 | 400 | 6.7% | 22,000~ 35,000 |
各種 法人 | 200 | 3.3% | 22,000~ 35,000 |
個人 事業主 | 800 | 13.3% | ピンキリ |
そこそこの就職ができ、定年まで働くことができれば最低でも約2億円の生涯賃金になりますが、小・零細企業では頑張ってやっと同等レベルです。
この収入で生活のやりくりをするわけですが、大都市圏、地方ではまた収入の価値も変わってきます。
子どもの教育費は一体どれくらい必要なのか?
地方在住の一般的な家庭で、子どもに十分な教育を施した場合にどの程度の金額が必要になるかを計算してみました。
地方で子どもに十分な教育を施した場合の費用は
地方の場合、私立の学校へ進学する選択肢は都会と比べ少ないでしょう。
そう考えると、一般的な進学スキームは次の通りになります。
- 小中高全て公立
- 小中高公立⇒国公立大学
- 小中高公立⇒私立大学
もし、私立進学を加味する場合は、授業料や付帯費用を上乗せしましょう。
以下にスキームの詳細を一つづつ確認します。
高卒の教育費(基礎計算)
ここは「パターン①」の高卒で就職する場合と共通です。
❶小中高全て公立
通常最も多いのが高卒で就職するパターン。
全てを「公立」で済ませた基本的なコストを先ず算定しましょう。なお、制服代や給食費など付帯費用は含みません(あくまでも教育費のみ)。
3,134,000円
- 公立小学校時代 824,000円/6年
- 低中学年時代(1~4年)336,000円/4年
~公文や進研ゼミなどを実施しているとして - 高学年時代(5~6年)488,000円/2年
~近所の学習塾へ通わせ特別講座も受講
- 低中学年時代(1~4年)336,000円/4年
- 中学校時代 990,000円/3年
- 3年間学習塾へ通わせ、特別講座、受験対策なども受講と想定 990,000円/3年
- 高校時代 1,680,000円/3年
- 3年間学習塾もしくは予備校、特別講座、受験対策なども受講 1,320,000円/3年
- 高校の授業料 360,000円/3年
基本的な教育費の合計は「3,134,000円」です。
もちろん、実施内容で金額は前後し、私立の場合は学費が上乗せされますね。
ちなみに悪い意味の「放任主義」家庭や、羨ましくも自力でも勉強ができちゃう「良い子」の居る家庭は高校の学費だけで済みます。
何もやらない「放任主義」
自力でできる「良い子」
360,000円
- 公立小学校時代 0円/6年
- 中学校時代 0円/3年
- 高校時代 360,000円/3年
- 高校の授業料 360,000円/3年
これはあくまでも「参考」とし、以降の大学進学を行った際の計算では、「3,134,000円」に大学進学で発生する費用を上乗せし計算致します。
大学まで進学した際の教育費(基礎計算)
大学進学の場合、大きく分けて「国公立大学」と「私立大学」への進学があります。
また、私立大学へ進学する場合は、「文系」と「理系」で大きく学費が変わることにも注目しましょう。
更に、進学する地域も「地元」「地方」「都市圏」でコストが変わります。
これらの費用について先ずは理解することが重要です。
国立大学(公立大学)
- 理系
- 2,425,200円/4年間
- 文系
- 2,425,200円/4年間
私立大学
- 理系
- 6,000,000円/4年間
- 文系
- 4,000,000円/4年間
公立大学の場合、国立大学の学費より若干高額になる場合があります。
また、私立大学は大学によって学費は異なるため、平均的な金額を算定しており、医学部医学科など特殊な学部は除外していますが、国立大学は一律同じ学費になります。
次に自宅から見た進学先のロケーションによる違いを計算しましょう。
地元の大学へ進学
- 2,400,000円/4年間
地方の大学へ進学
- 5,280,000円/4年間
都市圏の大学へ進学
- 6,240,000円/4年間
自宅から通学できない地域へ進学した場合、通常のおこずかいや学費以外の学校納付金の他に、「生活費+家賃」が重くのしかかります。
では、大学卒業までに必要な子供の教育について、実際の必要金額を計算してみましょう。
❷公立小中高 ⇒ 国公立大学
大学へ進学するパターンでは、「地元」「地元以外の地方」「都市圏」の3つに分かれます。
3つのパターンで結果を算出しましょう。
項目 | 地元進学 | 地方進学 | 都市圏進学 |
---|---|---|---|
高校卒業 | 3,134,000円 | 3,134,000円 | 3,134,000円 |
大学学費 | 2,425,200円 | 2,425,200円 | 2,425,200円 |
生活費 | 2,400,000円 | 5,280,000円 | 6,240,000円 |
合計 | 7,959,200円 | 10,839,200円 | 11,799,200円 |
同じ国立大学進学でも、自宅通学と都市圏への進学では約1.5倍の差が生じます。
一方、私立大学の場合はどうでしょうか?
❸公立小中高 ⇒ 私立大学
私立大学へ進学するパターンでは、「地元」「地元以外の地方」「都市圏」の進学場所以外に、「理系」「文系」の進学学部による費用差が生じます。
「理系」「文系」それぞれ、3つのパターンで結果を算出しましょう。
「理系」の私立大学へ進学した場合
項目 | 地元進学 | 地方進学 | 都市圏進学 |
---|---|---|---|
高校卒業 | 3,134,000円 | 3,134,000円 | 3,134,000円 |
大学学費 | 6,000,000円 | 6,000,000円 | 6,000,000円 |
生活費 | 2,400,000円 | 5,280,000円 | 6,240,000円 |
合計 | 11,534,000円 | 14,414,000円 | 15,374,000円 |
「文系」の私立大学へ進学した場合
項目 | 地元進学 | 地方進学 | 都市圏進学 |
---|---|---|---|
高校卒業 | 3,134,000円 | 3,134,000円 | 3,134,000円 |
大学学費 | 4,000,000円 | 4,000,000円 | 4,000,000円 |
生活費 | 2,400,000円 | 5,280,000円 | 6,240,000円 |
合計 | 9,534,000円 | 12,414,000円 | 13,374,000円 |
教育費の総額
進学先 | 進学 地域 | 4年間 大学費用 | 教育費 合計 |
---|---|---|---|
国公立大学 | 地元 | 483万円 | 796万円 |
地方 | 771万円 | 1084万円 | |
都市圏 | 867万円 | 1180万円 | |
私立文系 | 地元 | 640万円 | 954万円 |
地方 | 928万円 | 1242万円 | |
都市圏 | 1024万円 | 1338万円 | |
私立理系 | 地元 | 840万円 | 1154万円 |
地方 | 1128万円 | 1442万円 | |
都市圏 | 1224万円 | 1538万円 |
生涯賃金格差は教育格差
高校まで公立という、最もコストがかからない状況であっても、大学まで進学した場合は8百万円~15百万円の費用が必要となる。
子供が二人なら単純に倍の16百万円〜30百万円の教育費が必要となるのです。しかも生涯賃金は税込で算定しているので、「手取り」と考えると更に大変だ。
税込生涯賃金最高の6億円であれば、教育費の占める割合は「0.17%~2.5%」程度なので負担は無いだろう。
しかし、高卒成功組の2.5億円では、教育費の占める割合は「3.2%~6%」に跳ね上がり、子どもが二人であれば相当計画的にお金を蓄えないと老後が厳しくなることは当然。
小企業の最低賃金層となれば、1.3億円に対し「6.2%~11.5%」と、収入の十分の一が消える計算だ。
恐らく、出来の良い子どもは「奨学金」という借金に頼らざるを得ないだろう。
これらのことから、「行く価値のある大学」を目指す教育設計を行い、スピンアウトした場合でも最低「高卒就職の勝ち組」を目指せるよう、明確な道を作ってほしい。
本当に、零細企業の給与は「やばい」です。
40代でも平気で「年収200万円台」の基本給が設定され、キチガイのような残業をこなさないと生活が困窮すると思われる金額。
仕事が暇になり、残業が減少すれば相当キツイ内容であることは容易に想像できます。
同じ轍を踏ませない、子どもの将来を真剣に考えることはとても重要なのです。